実際には統制経済の部分が色濃く残っていて、私は現地で会社経営をしているからよくわかるのだが、毎年春になると「給料を15%上げろ」と市が言ってくる。「15%も上げたら会社がもたない」と抗議しても、「命令だ」と問答無用。(1)

  • 2017.04.20 Thursday
  • 08:44

 

『日本の論点   2017〜2018』 

テーマは「知性」の復権だ!

大前研一  プレジデント社   2016/11/12

 

 

 

<右傾化する世界をどう生きるか>

<日本を救えるのは“知性”のみ>

・資本主義陣営も共産主義陣営も第三世界も空中分解して、もはや頼れるものは自分しかないとなれば、どうしても内向きになる。そして内向きに小さな秩序を求めようとすると、歴史やナショナリズムという軸足に行き着きやすい。「我が国」「我が民族」というアイデンティティに拠って立とうとするから、安倍首相は「美しい日本を取り戻す」と訴え、トランプ氏は「偉大なアメリカを取り戻す」と(国は違えどほとんど)同じ歌詞の唱を叫んで拳を振り上げるのだ。

 

<「同一労働同一賃金」は地方創生どころか、地方を殺す>

・同一労働同一賃金がいかに非現実的であるか、本来ならグローバル経済の最前線で戦っている企業経営者が「それは違う」と発言しなければいけない。中国で同一労働をしている人と同じ給料にするのですか?と経営者は安倍首相に問わなくてはいけない。我々がグローバリズムの恩恵にどれだけ浴しているか。グローバリズムに反する施策で自国の産業や雇用、労働者を守ることでどれだけ莫大なダメージを被るのか、声を大にして言うべきなのだ。

 しかし経済人はグローバル化のメリットを絶対に口にしない。「おまえが雇用を(外国に持って行き、日本国内から)奪っている」と標的にされるからだ。

 社会が右に寄ってくると、ますます声を出しにくい。何を言っても「唇寒し」なのである。

 

アベノミクスの矛盾が確実に顕在化する

日本においてはアベノミクスの矛盾が確実に顕在化する。日銀にETF(上場投資信託)を買い入れさせるなどというのは経済政策ではなく、株価維持策でしかない。株価操作の悪影響はいずれ猛烈に出てくる。1年前とは様変わりで、企業業績は発表されるたびに悪化していて、すでに企業の7割が減収減益に入っている。トヨタさえも減収減益なのだ。

 

中国バブル崩壊から「世界大恐慌」へ飛び火する可能性(2015年11月2日 記)>

・とうとう中国バブルがはじけた。2015年6月中旬の上海市場の暴落以降、中国当局は政策金利の利下げや新規株式公開の大幅削減、大手金融機関による株価買い支え、大株主の売却禁止措置など株価対策を講じてきたが、上海市場は乱高下しつつ下げ止まらない。

 

・「中国株市場では8割が個人投資家で、しかもその多くが借金をして投資している。それゆえに、政府がいくら対策を講じ株価を戻しても再び下降する運命にあるのだ」

 

<バブル崩壊後の中国が軟着陸できない理由>

・はじけたバブルを軟着陸で収束させるのは難しい。大抵はハードランディングして大不況に突入、路頭に迷う人が大勢出てきて、治安も悪化、取り付け騒動が起こり社会不安が増大――というパターンにはまる。

 

・その点、低成長へとうまく軟着陸できた珍しいケースが日本。

 バブル崩壊後の「失われた20年」でGDPはゼロ成長と言われているが、その間、1ドル=80円から120円に為替は円安に動いた。

 

・当面、日本経済が大きくズッコケる危険性は低い。かといって大きく成長することも考えられない。アベ・クロ・バズーカで刺激しても1%も成長できないのだから、日本はまさに低成長の見本のような国だ。

 

私の最大の懸念は共産党幹部が中国経済の現実を正しく理解していないことだ。小平の改革開放以降、中国は社会主義に市場経済を取り入れた、「社会主義市場経済」を標榜してきた。社会主義における経済とは中央集権的な統制経済、計画経済であり、本来、市場経済とはまったくの別物だ。

 

実際には統制経済の部分が色濃く残っていて、私は現地で会社経営をしているからよくわかるのだが、毎年春になると「給料を15%上げろ」と市が言ってくる。「15%も上げたら会社がもたない」と抗議しても、「命令だ」と問答無用中国は許認可社会だから従わなければライセンスを取り上げられるし、従業員の権利意識もこの10年で飛躍的に高まって何かあるとすぐに弁護士を連れてくる。

 

・おかげで経営を始めてから10年以上経つが、月2万円だった従業員の給料は10万円になった。

 日本で商売したほうが安いくらいで、広東省の繊維業はこの1年で4000社が会社をたたんで、ベトナムやカンボジア、ミャンマーやエチオピアなどに逃げた。

 

・賃金が上がれば物価も上がるのが、中国では物価もコントロールされている。賃金コストが上がるのに、価格が転嫁できないのだから、経営側は苦しい。

 

<土地から株式市場へ移った「官製バブル」>

・政府が唯一コントロールしてこなかったのが、不動産の価格である。中国は全土が共産党政府の持ち物。農民は政府から土地を借りていることになっているから、取り上げるのは容易。市政府は二束三文のお金と代替地を与えて農民から土地を収奪し、デベロッパーに開発させる。商業地としてリースするときは土地の値段が50倍にも100倍にもなって、その差額が市の財政に転がり込んでくる。

 これが中国の急成長と土地バブルを演出した土地マジックの基本的な仕組みだ。市政府の歳入の平均3分の1が土地の転売益で、歳入の半分を占める例も珍しくない。税収に頼らなくても都市開発ができるし、道路や港湾などのインフラも整備できるから市民としては文句ない。

 開発業者は儲かるし、口利きした政治家や許認可権限を持つ上級役人、開発に関与した末端の役人に至るまで業者からキックバックがあるから、エブリワンハッピーなのだ。

 

・だから政府は不動産の高騰を野放しにしてきた。そのほうが共産党政権としてはパイが広がるからである。

 

・売れなくなれば不動産価格は下落する。危機に敏感な銀行は不動産融資を手控えるようになり、各市町村や個人は高利の中国版ノンバンクから借りるようになった。結果、雪だるま式に借金が増えて、せっかく買った不動産を手放さなければならない状況だ。

 

<中国政府が悪夢を見るのはこれからだ>

・そもそも時価総額的にいえば上場企業の半分以上は国営企業。中国の国営企業といえば世界に冠たる非効率な組織だ。企業の現在価値に相応しいレベルまで株価が落ちるとすれば、3割減、4割減では済まない。早晩、株価は半分以下になるかもしれない。

 

この中国のバブル崩壊は1989〜90年にかけての日本経済のスローダウン、つまり日本のバブル崩壊とは比較にならないくらい世界に甚大な影響を及ぼす。中国に突然死されたら、調子がよかった海外企業も後追いしかねない。

 

・バブル崩壊で仕事がなくなる企業をどうするのか、中国政府が悪夢を見るのはこれからだ。他方、中国の急成長に乗っかって資源や原材料、食料や各種製品を輸出してきた海外の企業も厳しい局面を迎える。今まで調子がよかった国や企業は、中国依存が非常に大きかった。その中国に突然死されたら、後追いしかねない。今回のバブル崩壊は1929年のアメリカのバブル崩壊と同等のインパクトがある。世界大恐慌に匹敵する不況を招く恐れがあるのだ。

 

・社会主義市場経済の矛盾を理解していない共産党政府が、引き続き自分たちで管理できるとばかりに手荒な対症療法をすれば、市場は過剰反応し事態をこじらせかねない。かといって、自信が揺らいだ政府が操縦桿から手を放して市場経済に任せれば、為替や金利が乱高下し、ますますコントロール不能になってしまう。

 

賃金も、為替も、金利も、株もすべて管理してきた政府が今さら市場経済を学ぶ時間はない。躊躇すれば世界が巻き添えになる何とも悩ましい中国経済(そしてやがて共産党政府)の先行きを、世界は固唾を呑んで見守っている。

 

 

 

『日本の論点 2016〜2017

大前研一   プレジデント社 2015/11/13

 

 

 

<「事実」と「論理」の積み重ねから結論を導き出せ!>

<「言わぬが花」の美徳は世界では通用しない>

・これからも欧米との付き合いは続くし、中国やインドなどの新興大国も西洋思想に馴化してくる。それらの国々と対等に渡り合うためには、数学や英語、理科、社会などの科目と同等以上の、最重要科目と位置付けて論理思考の教育に取り組んでいくべきだと私は考える。

 

<前提となる事実を間違えては三段論法が成り立たない>

・アベノミクスが景気浮揚効果を発揮しないのは、安倍首相と取り巻きの経済アドバイザーたちが100年前のケインズ経済学を前提に戦略を立てているからだ。

 お金をバラまいて金利を安くすれば借り手が山のように現れて、消費や設備投資に回されて景気が良くなるというのは大昔の話で、今はどれだけお金をバラまいても日本経済に浸み込んでいかない。年利1.5%の住宅ローンさえ借り手がいない。

 マネーサプライや金利政策が有効に機能するケインズ経済学は、一国でほとんど完結する閉鎖経済を前提にしている。今は開かれたボーダレス経済の時代であって、金利の安い国から金利の高い国へお金が流れていく円キャリー、ドルキャリーのようなことが平気で起きる。

 ケインズ経済学では金利を高くするとインフレを抑制する効果があるはずだが、今や金利を高くすると世界中からお金が集まってくる。ボーダレス経済ではケインズ経済学とは真逆の現象が起きるのだ。

 

<積極的平和主義は新しい世界観ではない>

・私は憲法をゼロベースで書き直すべきとする「創憲」派で、自分でも憲法を書いている(詳しくは拙著『平成維新』の「日本の国家運営の新理念」というチャプターを読んでほしい)。70年前につくられた現行憲法は不備が多く、体系的にもいびつで、フレームワークがない。先進国になった日本の実情に噛み合っていない箇所も多い。

 安倍首相が目指しているような「改憲」、もしくは公明党的な「加憲」(現行憲法に環境など新たな理念を加える)では、アメリカをはじめ世界の理解を得るのは難しい。

 

・日本は世界貢献のアピールがうまくできていない。同じお金を出すにしても、日本国民が納める税金の何%かを日本以外のために使う「世界タックス」としてアピールすれば、世界から好感される。過去を振り返るのは程々にして、日本の世界観を発信すべきだ。

 

<アベノミクスのまやかしは見透かされている>

・人気取りの経済政策で行き詰まり、憲法改正が封じられては打つ手なし。

 

・「憲法改正が封じられると、安倍政権に次のアジェンダは見当たらない。次のアジェンダが打ち出せない政権は、詰んでいるに等しい生きる屍、ゾンビのようなもの」

 

<ウィキペディア化してしまった首相談話>

<安倍政権のアジェンダは多すぎる>

・政治の世界には「一内閣一仕事」という言葉がある。一つの内閣がやり遂げられる仕事はせいぜい一つ、という意味だ。佐藤内閣の「沖縄返還」、田中内閣の「日中国交正常化」、中曽根内閣なら「国鉄分割民営化」、竹下内閣は「消費税創設」、小泉内閣でいえば「郵政民営化」といった具合。

 その伝で言えば、安倍政権のアジェンダは一つの内閣としては多すぎる。20年続いたデフレを反転させただけでも拍手喝采なのに、消費税増税、集団的自衛権行使容認と安保法制、大詰めを迎えているTPP交渉、拉致問題の解決、ロシアとの領土交渉、いずれも大仕事である。

 

・第1次政権、第2次政権、第3次政権を通じて国民投票法を制定して憲法改正の道を開き、さらには選挙権年齢も18歳に引き下げる道筋も示したのだから、それだけでも一内閣の功績としては十分評価できる。

 

<人の消費意欲が極端に低下する「低欲望社会」>

・私が以前から指摘しているように、安倍政権の経済政策では日本経済は上向かない。なぜならアベノミクスは20世紀型の経済政策だからだ。

 日本は「低欲望社会」という未曽有の状況にあって、消費意欲が極端に低下している。家もクルマも家電も欲しいという高欲望社会を前提にしたケインズ経済的な金融緩和を行っても、個人消費も企業の設備投資も刺激されない。政府が市中に投じたGDPの約半分の巨額な資金はほとんど日本経済には吸収されてないのだ。その金がどこへ行ったかといえば、貸出資金があり余った金融機関がアメリカの会社を次々と買っている。

 要するに円が暴落したときのリスクヘッジとして、すでに300兆円ぐらいをドルベースの資産に切り替えているのだ。三本目の矢の成長戦略にしても、お目こぼし特区をつくったり、地方創生で1000億円程度のしみったれた金を地方にバラ撒いているようでは、効果はまったく期待できない。

 こうしたアベノミクスのまやかしが国民に見透かされつつある。ちなみに当初、アベノミクスがうまくいっているように見えた理由は、新政権の誕生でデフレに終止符が打たれるかもしれないという期待感で、1600兆円の個人資産の一部が市場に出てきたからにすぎない。つまり、私が提言している「心理経済学」の典型的な事例である。

 

<日本経済を立て直す政策はこの3つだ>

・憲法改正が封じられると、安倍政権に次のアジェンダは見当たらない。今さら魔法が解けたアベノミクスでもなかろう。次のアジェンダが打ち出せない政権は、ももはや詰んでいるに等しい。与野党に有力な対抗馬がいない状況でありながら詰んでしまったということは、安倍政権は生きる屍、ゾンビのようなものだ。

 本気で日本経済を立て直そうとするなら、低欲望社会の問題解決に取り組むしかないのだが、その場合、三つぐらいの非常に際立った政策が必要になる。一つは移民政策であり、二つ目は少子化対策。安心して子供を産み、育てられるような社会をつくること。そして三つ目は教育改革。もう一度、世界で戦えるような気概とアンビション(大志)を持った人間を育てることだ。

 この三つの政策が回らない限り、日本の再活性化はありえない。しかし、今のところ安倍首相のアジェンダには入っていない。本来ならポスト安倍を狙う人たちがそうしたアジェンダを明確に打ち出して対抗すべきなのだが、どこからも聞こえてこない。三年の新たな延命を達成した安倍総理ではあるが、これ以上アジェンダを増やさないで少なくとも一つ、何か成果につなげてもらいたいものだ。

 

・本気で日本経済を立て直すなら、「移民政策」「少子化対策」「教育改革」の三つの政策を回し、低欲望社会の問題解決に取り組むしかない。安倍政権は一つの政権としてはアジェンダが多すぎる割には、アベノミクスのまやかしが国民に見透かされつつあるうえ、本丸の憲法改正も封じられかねない。せめて日本経済立て直しの前提となる三つの政策のうち、少なくとも一つは成果につなげてもらいたい。

 

<目を覚ませ!年金制度はもう破綻している>

<年金や貯金があるから安心―という発想では生き残れない>

・「日本の経済成長率、サラリーマンの昇給率、子供の出生率、そして運用利回り―これらの前提が全部間違っているのだから、制度が成り立つわけがない」

 

<あまりに甘すぎる年金の制度設計>

・勘違いしてはいけないのは、国民のために少しでも年金の運用効率を高めようという発想から運用比率が見直されるわけではない、ということだ。そもそも年金についてマジメに考えている政治家や役人は過去にも、そして今現在も、いないと思ったほうがいい。

 

・今から15年ほど前、2000年くらいに、国の年金政策に関わっている御用学者と議論をしたことがあるが、当時からとんでもないことを言っていた。4%の経済成長が持続して、サラリーマンの定期昇給も年4%、少子化に歯止めがかかって出生率が2.0まで回復する―—。そういう前提のうえで5%の運用利回りが確保できれば年金が回るように制度設計している、と胸を張るのだ。

 1990年代の経済状況の推移や少子化の進展具合から考えて、あまりに想定が甘すぎる。これでは国民を欺くようなもので、本気で年金制度を維持するなら支給年齢を引き上げて、支給額を減らし、保険料を高くするしかない。私がこう指摘すると、そこはいじりたくないというのだ。

 結局、失われた20年を経た今も日本経済は低成長、もしくはマイナス成長に喘ぎ、定期昇給は昔話になった。出生率は子供二人など夢のまた夢の1.41。年金資産の実質的な運用利回りは1.7%程度だ。

 前提が全部間違っているのだから、制度が成り立つわけがない。一昔前に5000万件の年金記録の記載漏れが発覚して「消えた年金記録」と大騒ぎになったが、年金制度の破綻を問われたくない役人からすれば、年金記録はもっと消えてほしいところだろう。公務員には恵まれた共済年金があるし、政治家にも手厚い議員年金がある。こちらは株式や外債の運用比率を増やすとは言っていない。下々の年金問題なんて他人事なのだ。

 

・一方、勤労者の代表たる組合は年金問題をもっと突き上げていいはずだ。しかし、総評系などは大企業の組合ばかりで、大企業は企業年金が充実している。要するに国民年金をもらう人たちを代表する組合がないのである。

 

<「大前流」老後のお金サバイバル術>

・結論を言えば、「老後の資金は自分で準備するしかない」。政治家や役人が牛耳って、政策の失敗を誤魔化すために株を買い込ませたり、外債を抱え込ませる年金ファンドに虎の子を預けるのはやめたほうがいい。地雷を踏んで一発で即死する危険性がある。

 国任せにしないで、年金は自衛すべきというのが私からのアドバイスだ。「年金は社会保障」と決めつけて公的年金制度に依存するリスクは、日本の債務状況と人口減時代の進行を考えれば、今後、確実に高まってくる。

 

・老後資金自分で準備するものと心得よ。たとえば、土地や生活必需品

関連の株なら国債が暴落してもそれほど価値は下がらない。外貨はなる

べく資源国で財政規律のいい国の通貨を選ぶ。ゼロから始めるなら、給料半分を外貨預金に充てるくらいの気持ちで。

 

 

 

『日本の論点  2015〜16

大前研一  プレジデント社   2014/11/14

 

 

 

<さて、今の日本にとって最大の論点は何だろうか。>

・種切れのアベノミクス、冷え込んだ中国や韓国との関係、集団的自衛権と日本の安全保障、歯止めのかからない少子高齢化、グローバルな人材を生み出せない学校教育……各論はいくらでもある。しかし論点を整理して一つに絞るならば、約1000兆円(14年6月時点で1039兆円)を超える巨大な国家債務をどうするか、という問題に尽きると私は考える。

 

・国家債務の問題はこの土砂災害の構造とよく似ている。市場が返済不能と判断したとき、土砂降りのように売り浴びせられて、薄皮のような信用の上に成り立っていた日本国債はズルリと滑って暴落し、日本は財政破綻する。ところが累積債務が危険水域に入っていることを認識していながら、政府はいまだに大型予算を組み、国債を発行し続けている。

 

・大体、世界的に見ても、都市化が進行する中でバラマキをやって地方が“創生”した試しはない。砂地に水を撒くようなものだ。人気取りの無駄なバラマキ政策がまたもや繰り返されて、国の財政基盤はさらにぬかるむ。国債暴落→債務危機という土砂崩れがいつ起きても不思議ではないのだ。

 

・40兆円の税収しかないのに、100兆円の予算を組んでいれば綻びが出るのは当たり前である。そうした赤字を埋め合わせるために発行してきた国債や地方債などの債務残高は1000兆円を超えて、世界最大の国家債務を刻々更新し続けている。

 

・1000兆円を超える国の借金ということは、国民一人当たり1000万円の借金があるということだ。生まれてきたばかりの赤ん坊もマイナス1000万円の十字架を背負っているわけで、その子たちに返せるわけがない。

 

・一方、少子高齢化で借金を返す立場の就業者は年毎に減っている。就業人口は毎年80万人ずつ減っていく計算になるが、それでは現場が回らなくなるということでリタイアを引き延ばして、かろうじて毎年30万〜40万人のマイナスに押しとどめている。国の負債は増え続けているのに、就業人口は毎年30万人以上減っているのだから、“地滑り”のエネルギーはますます蓄積されていく。

 

・国家債務問題を日本が自力で解決しようとすれば、アプローチの筋道は二つしかない。一つは歳出を抑えること。税収40兆円に対して国債の利払いだけで25兆円もあるのだから、実質的に使える税収は15兆円ほどしかない。その範囲の歳出に抑えれば、とりあえず流血は止まる。財政破綻したギリシャ以上の超緊縮財政に移行せざるをえないから、国家公務員の3分の1を削るくらいの抜本的な行政改革が必要になる。

 もう一つは歳入を増やすことだ。要するに増税、それとも超増税である。税収が見込めるのは消費税ぐらいしかない。単純計算で消費税を20%ぐらいに引き上げなければならないだろう。

 超倹約か、超増税か、あるいは両方か――。国家債務の解決策はこれしかない。ところが、そうした正論を真正面から訴える政治家はほとんど選ばれないし、マスコミも報道しない。従って、この超難題を解決しようという国民的議論が立ち上がってこない。

 

<その手のリーダーによって導かれる「戦争」もまた、国家債務問題を解決する一手段なのである。>

・繰り返すが、今の日本にとって最大の論点は国家債務問題であり、この明らかな物理現象を見て見ぬふりをしてやり過ごしていることである。

 もしアメリカで日本と同じような状況が生まれたら、「20年先には破綻する」という前提で議論が始まって、歳出を抑えようという方向に進むだろう。しかし、日本では散発的な議論が始まって、歳出を抑えようと方向に進むだろう。しかし、日本では散発的な議論しか出てこないし、今なお史上最大の予算を組んでいる。

 

・自民党→民主党→自民党というここ数年の政権交代の流れを見てきてわかったことは、政権党が変わっても、政治主導でも官僚任せでも、永田町と霞が関が主体になっている限りは、国家債務問題は動かないということだ。

 

・では、動かすにはどうすればいいか。解決策の一つは道州制にあるというのが私の考え方だ。

 中央政府が一つの答えを追い求めてもなかなかうまくいかない。それならば10の道州に行政単位を分けて、10個のエンジンでそれぞれにバラバラな答えを出してアイデアを競う。たとえば国家債務の半分を冷蔵庫に入れて、残り半分を人口比やGDP比で割って各道州に負担させるのだ。

 

<大前流「超参謀メソッド」大公開>

<マハティールの参謀として日本を見る>

<中曽根さんの打てば響くような理解力>

・日本の政治家でいえば、中曽根康弘元首相が遜色ない資質を持っていたと思う。中曽根さんの場合、「日本をこうしたい」という自分なりのシナリオを持っていた。こだわっていたのは日米関係をイコールパートナーにすることで、「イコールパートナーはこうあるべきだ」というビジョンが中曽根さんの頭の中に明確にあった。

 

・中曽根さんとの関係は参謀というよりブレーンのようなもので、最初のきっかけは86年の総選挙で自民党の戦い方を提案したことだった。

 前回選挙では、ロッキード事件で逮捕された田中角栄元首相が一審で有罪判決を受けたことで政治倫理が大きな争点になり、自民党は単独過半数を割る敗北を喫した。自身三期目、しかも自民党単独政権を目指す中曽根さんとしては、次の総選挙での必勝を期していたが、事前の票読みでは形勢不利で惨敗の可能性すらあった。

 そこで中曽根さんに授けたアイデアが「衆参ダブル選挙」だった。

 

<課題はいつの時代もある参謀のタネは尽きない>

・30年来の付き合いがある会社の仕事をしていると、課題がますます難しくなっていて、戦略を考え抜いて先方に提示するまで今でも緊張する。

 課題はいつの時代もある。だから参謀のタネは尽きない。『企業参謀』では、「参謀五戒」という形で参謀の心得を説いている。

 

一 参謀たるもの、「イフ」という言葉に対する本能的怖れを捨てよ

二 参謀たるもの、完全主義を捨てよ

三 KFS(key Factors Success 戦略の成功の鍵)に徹底的に挑戦せよ

四 制約条件に制約されるな

五 記憶に頼らず分析を

 

・今の時代にあえて付け加えるなら、「自分のインタレスト(利益、利害)を捨てよ」ということだろう。

 

・自分のインタレスト、自社のインタレストは捨てて、「この人を輝かせるためにどうしたらいいか」だけを考える。ただし、それは自分の理想や要望であってもいけない。無理な戦略を提言して「それはいいけど、俺には無理だ」と言われたら仕方がないし、無理強いして失敗させたら元も子もない。

 大将の能力、力量を正しく見極められなければ、参謀は務まらない。

 

<オリンピックバブルに騙されてはいけない>

<日本を活性化できるのは東京の「西高東低」を是正する大規模開発だ>

<長距離通勤は人生を消耗させる>

・日本の大都市の特徴として、都市の西側のほうが東側よりも地価が高くなるという傾向がある。東京・大手町からJRや地下鉄で15分、30分、1時間というふうに同心円を描くと、同じ時間・距離でも西側と東側では土地の値段が4倍くらい違うことがわかる。

 

・こうした「西高東低」の傾向は、今後大規模開発によって十分に変更可能だと私は考える。

例えば、これから東京都内に家を買おうというビジネスマンが、一切のバイアスを取り除いて通勤の利便性だけで物件選びをするとすれば、絶対に“西側”は選ばないだろう。

 

<職住近接の24時間タウン>

・私は千葉県木更津市から神奈川県横浜市の金沢八景辺りまでの東京湾岸一帯を再開発して、ウォーターフロント100万人都市を誕生させようという「湾岸100万都市構想」をかねてから提唱している。東京都下で中核になるのは、先述の築地、勝鬨、晴海エリアである。

 

・オリンピックのような国家的イベントが成長のきっかけになるのは、途上国においてだろう。本当に日本を活性化できるのは、東京の「西高東低」を是正するような大規模開発だ。

 

<バブル崩壊前夜の中国とどう付き合うか>

<1億円以上持つ中国人の50%は国を出る準備をしている>

・「習近平国家主席は日本との関係改善に前向きな気持ちを持っているが、中国の軍事利権とエネルギー利権の関係者は、日本との関係が悪化するほど、予算が取れるから、日中関係を煽っている」

 

<巨大市場としての魅力は薄れリスクがクローズアップ>

・しかし10年のワンサイクルを経た今日、中国の巨大市場としての魅力は減退し、逆にカントリーリスクが顕在化し、中国経済はいつバブルが弾けてもおかしくない状況だ。

 

・労働コストの上昇で、中国の生産拠点としてのメリットは失われつつある。逆に政治家や役人の腐敗、先進国から大きく遅れた法整備、当局の不条理な規制や指導など、爆発的な成長の陰に覆い隠されてきた中国経済の暗部が露わになり、チャイナリスクがクローズアップされるようになった。

 

・特に邦人企業の場合は、戦後の歴史問題のために、反日運動や嫌がらせの標的になりやすい。日本政府が尖閣国有化を言い出したときに、さまざまな対日報復措置の指揮を執ったのが習近平国家主席(当時は国家副主席)だった。習近平体制は今後10年続く可能性もあり、当面、日本の企業に中国で浮かぶ瀬はなさそうだ。そのような視点に立って、企業経営はアジア戦略を見直す、リバランスする作業が必要ではないか、と思う。

 カントリーリスクの高い中国のウエートを落として、今後、10年、20年、中国で何が起きても耐えられるくらいまで中国依存を減らし、ほかのアジア諸国の配分を高めていくべきだろう。

 

<カリスマ的指導者は中国では出ない>

・最近の調査で「修復しがたい敵意」を相手に対して持っている人が日本・中国とも90%という信じられない悪循環に陥っている原因は、尖閣国有化だけではなく、中国共産党の事実を歪曲した広宣活動がその根底にあると知るべきだ。ソ連と比べるとその点がかなりクリアになる。ペレストロイカ(改革)とグラスノスチ(情報公開)で旧ソ連を否定し、解体に導いたゴルバチョフ、その後のエリツィンやプーチンのようなカリスマ的指導者は中国では出てこない。

 

<チャイナリスクと向き合う覚悟を>

・共産主義は貴族や資本家から収奪した冨の分配については説明していても、富をどうやって生み出すのか、皆でつくった富をどうやって分けるか、という論理がきわめて弱い。ここが一番の問題で、共産主義とは「皆が貧しい時代の教義」なのである。

 

・当然、中国社会には不満が充満している。これまでにも年間20万件くらいのデモやストライキがあったが、主役は土地を取り上げられた農民など貧しい人たちだった。しかし、成長が止まり、土地バブルが崩壊するとなると先に豊かになった“はず”のインテリ層、小金持ち、中金持ちが不満分子の中核となってくる。

 

・倹約令と腐敗の摘発で民衆の不満をなだめようとしているが、それで改革開放で決定的となった貧富の格差の拡大が埋まるわけではない。結果として、中国の政治と経済の矛盾はますます拡大し、人民の目を外に向けるために周辺諸国との関係が緊張する。

 

 今の中国指導層にそれ以外の知恵も歴史を見直す勇気もない、と理解すれば、日本企業は中国の次の10年は、チャイナリスクと向き合う覚悟と準備をするべきだろう。同時にアジアの他の諸国との「リバランス」を検討することも必要となる。

 

・(結論!)企業経営はアジア戦略を見直し、リバランスする作業が必要。カントリーリスクの高い中国のウエートを落とし、今後、10年、20年、中国で何が起きても耐えられるくらいまで中国依存を減らして、ほかのアジア諸国の配分を高めていくべき。

 

 

<●●インターネット情報から●●>

ウィキペディアWikipedia(フリー百科事典)より抜粋

 

<大前研一>

<主張>

・移民政策を行うべきだと主張し、1990年代前半より「グリーンカード制」導入を提案している。

 

・道州制の導入を主張している。

 

・18才成人制の導入に肯定的な立場である。

 

・2008年、日本経済新聞上にて『これからは韓流。日本は韓国を見習え』と韓国経済を評価する主張をしていたが、6年後の2014年には『サムスン電子と心中か? 韓国経済の暗雲』という表題でPRESIDENT紙上にて「サムスン電子がコケたら皆コケた」という韓国経済の脆弱性を批判している。

 

・北方領土は旧ソ連の“正式な戦利品”であり、「北方領土は日本固有の領土」という日本側の主張は史実を曲げていると主張している。

 

・医療費抑制策として、救急車の有料化を主張している。

 

・地方議員はすべて無給のボランティアにすべきだと主張している。

 

・航空機が東京都心上空を通過するルートをとる、都心の飛行拡大案については、騒音などの問題をきちんと議論するという条件付きで、基本的賛成の立場をとっている。

 

・アベノミクスに対しては20世紀型の経済政策だとし、批判的な立場をとっている。2014年時点で、日本経済の根本的な問題は「低欲望社会」にあり、個人が1600兆円の金融資産、企業が320兆円の内部留保を持っているのに、それを全く使おうとせず、貸出金利が1%を下回っても借りる人がおらず、史上最低の1.56%の35年固定金利でも住宅ローンを申請する人が増えていないことが解決すべき問題だと主張している。

 

・トマ・ピケティの2015年現在「日本は格差が拡大している」という主張に対し、たしかに、「相対的貧困率」や「ジニ係数」など日本で格差が拡大しているかのように見えるデータもあるが、日本で格差が拡大していることを示す現象はどこにもないとし、ピケティは日本に対し勉強不足だと批判している。ピケティは日本に対し、「資産家の高所得層に高税を課し、資産を持たない若者や中低所得層の所得税を引き下げる累進課税にすべきだ」と指摘したが、大前は「日本は世界で“最も社会主義化した資本主義国”だと思う。だから資産家に対して累進課税で高税を課すべきだというピケティ教授の主張は、全く当てはまらないと考えている」としている。

 

・アジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加は愚の骨頂であり検討する価値すらないと主張している。

 

・地熱発電に関して、日本に最も適した再生可能エネルギーであり、注力すべきと主張している。

 

・カネボウ、東芝、オリンパス事件などの粉飾決算事件を指摘し、監査法人は最長でも5年で代えるというルールにすべきと主張している。

 

・首都高の地下化を提言している。

 

・韓国に対しては、いくら日本を批判しても自国の改善にはつながらないことに思い至り、自分たちが真の先進国になるためにはどうすればよいか、冷静に考えられるようになるまで待つほうが良く、それまでは、韓国が何を言おうが無視して、韓国パッシングするスタンスが賢明であると主張している。

 

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  • 2017.10.19 Thursday
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